検診・健康お役立ち情報

毎日ドクタ- 健康かわら版 9月号

―  突然死の心配がない安全なスポ-ツをめざして ―

産業医・スポ-ツ健康指導医・毎日ドクタ-理事長 山田正樹

スポ-ツ現場での突然死
一流のスポ-ツ選手のみならず一般のスポ-ツ愛好家でもスポ-ツ中の突然死は発生します。その原因として最も多いものは心臓突然死によるものです。
心臓突然死をおこす病気としては肥大型心筋症(心臓の筋肉異常)、心室性不整脈(心室頻拍VT、心室細動VF)、心臓震盪(しんぞうしんとう)などがあげられます。

肥大型心筋症(心臓の筋肉異常)
若年者の突然死で最も頻度が高い病気です。家族歴、遺伝的な発症がみられます。全身に血液を送り出す心臓の左心室の筋肉(壁)が肥大して左心室が拡張不全をおこし発症します。前兆として胸痛がみられることもあります。有効な拍出量(心臓から送り出される血液量)が低下するため、運動後の血圧低下や失神発作もみられます。
突然死の家族歴や自覚症状があれば心電図、胸部レントゲン、心臓超音波検査を受けましょう。心臓超音波検査で左心室の筋肉(壁)を測定することで確定診断ができます。
運動については健康増進を目的とした軽いスポ-ツ以外は原則禁止となります(競技スポ-ツは禁止)。治療は血圧管理、心筋の負担軽減、不整脈予防などの内服治療が中心となります。

心室性不整脈(心室頻拍VT、心室細動VF)
心臓の鼓動は心臓の上方から下方(洞結節⇒心房⇒接合部⇒心室)へ向かって伝達され、心拍リズムが形成されています。この伝達が乱れて心室が勝手に鼓動する状態を心室性不整脈といいます。1分間に100回以上の心室性不整脈を心室頻拍VTとよびます。荷重の高い運動負荷でおきる場合と、心筋梗塞に伴っておきる場合があります。
心室頻拍VTから心室細動VFに移行すると失神、意識消失、呼吸停止、脈拍触知不良となり突然死の危険が増大します。ただちに体外式除細動器(AED)による治療が必要となります。体外式除細動器(AED)により生存率は格段に上がりますので、一般の方も1人は救急車の手配、1人は心肺蘇生、1人は音声ガイダンスに従い体外式除細動器(AED)を積極的に使用して下さい。初めて使用する人にも出来るようになっています。

心臓震盪(しんぞうしんとう)
スポ-ツ中に左胸に打撲、衝撃が加わり致死的不整脈の心室頻拍VT、心室細動VFが発生して突然死にいたる病気です。硬式野球でピッチャ-ライナ-の直撃、格闘技やタックルで左胸を強打した時、あるいは軟式野球でキャッチボ-ルのボ-ルが当たった程度でも発生することがあります。成長期の胸骨が柔らかい子供に多く発生します。ただちに体外式除細動器(AED)による治療が必要です。常に緊急事態の発生を意識、予測して運動しましょう。