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毎日ドクタ- 健康かわら版 2月号
―メンタル・ヘルスの大切さ その2―
産業医・毎日ドクタ-理事長 山田正樹
■メンタル・ヘルスを安定させるリジリエンス(resiliens)という概念
最近、入学試験、就職活動、入社後の適応障害、競走社会、人間関係のトラブル等により許容範囲を超えたストレス状態となり、こころが折れてしまい、うつ状態に陥る人が増えています。場合によっては休職を余儀なくされる人もいます。現在、大変辛い状況にあっても立ち直りの早い人と、そうではなく立ち直れなくなる人ではメンタル的に何が違うのかという研究が進んでおり、リジリエンスという概念が注目されています。リジリエンスとは外圧が加わった時に、その外圧に対する弾力性、反発力、復元力のことをいいます。精神医学の領域では立ち直りの早い人と遅い人では、その人が持っているリジリエンスに差があるのではないかと考えられています。『リジリエンス=こころの復元力、折れないこころ』には個人差がありますが、考え方の工夫、生活の工夫、経験値などにより高めていくことが可能です。
■リジリエンス=こころの復元力、折れないこころを構成する要素
① 日常生活の規則正しいリズム
就寝・起床時間、出勤までの準備、余裕のある出勤、3食の時間帯などの基本的なリズムが乱れていますと精神的、時間的に余裕がなくなり冷静な対応や思考に支障が出ます。
② 長時間勤務、休日出勤、荷重負荷の高い業務の是正・コントロ-ル
エンドレスの長時間勤務や荷重負荷の高い業務はストレス増大によるケアレスミス、業務効率の低下を招きます。結果として余裕のない思考パタ-ンとなります。
③ 状況分析能力・優先順位
困難に直面した時にパニックにならず状況を分析して、その内容を書き出してみましょう。
そして枝葉のことに捕われず優先順位をつけて緊急性・重要性の高い事から取り組みましょう。
④ 感情の自己コントロ-ル
感情の起伏が激しく物事に一喜一憂していると継続的な発展的思考が弱くなり、落ち込んだ時に方向性が見えなくなります。自己を客観視するトレ-ニングをしてみましょう。
⑤ 楽観性・プラス思考の努力
プラス思考の人は困難に直面しても前向きに取り組むことが可能ですが、そうでない人は1日に1つか2つ、どんな事でも構いませんのでプラス思考する努力をしてみましょう。
プラス思考をする努力により気持ちのぶれ幅が縮小していくことが期待できます。
⑥ 目標意識
自分自身の目標を掲げましょう。今日1日の目標、今週の目標、ここ1ヶ月の目標、年間の目標、数年単位の目標など。多忙の時はあえてハ-ドルを下げた目標にしましょう。
⑦ 公私にわたる充実感
仕事とプライベ-トがともに満たされるように、時間配分と切り替えを大切にしましょう。
⑧ 周囲のサポ-ト
何でも話せる相談相手を持ちましょう。先ず自分から挨拶をすることが出発点です。適正な評価はやる気の原動力になります。『大人もほめましょう』。
■リジリエンス=こころの復元力、折れないこころを高める実践
リジリエンス=こころの復元力、折れないこころを高めるために、上記①~⑧を検討されて、できる事から取り組みましょう。目指す所は『困難を跳ね返す鋼のような強靭な精神ではなくて、困難に遭遇しても柔軟に工夫をして、しなやかに乗り越える精神』です。毎日の気持ちの持ち方や行動を工夫して、1歩1歩確実にゆっくり階段を登って行きましょう。継続する事により経験値としても生かされ、リジリエンス=こころの復元力、折れないこころを高めることが可能となります。